介護現場において、多くの職員を悩ませる業務の筆頭が「介護記録」です。利用者さまの小さな変化を見逃さず、多職種と情報を共有し、法的な根拠を残すために記録は不可欠なものです。しかし、日中のケアに追われ、すべての記録を終えるのが終業間際になってしまい、結果としてサービス残業が常態化しているケースも少なくありません。
記録業務を効率化することは、単なる手抜きではなく、プロフェッショナルとして「ケアに集中する時間を創出する」ための重要なスキルです。定時で仕事を終え、心身のリフレッシュを図るために取り入れたい時短テクニックを整理しました。
読みやすく、かつ簡潔な介護記録のテンプレート(5W1Hの活用)
「何を書けばいいのか迷う」という時間が、記録を長引かせる最大の原因です。迷いをなくすためには、情報を整理するためのフレームワークである「5W1H」を意識したテンプレート化が有効です。
5W1Hによる客観的な事実の記載
感情的な表現や主観を排し、以下の要素を簡潔に並べるだけで、プロとして過不足のない記録になります。
- When(いつ):14時頃、おやつの時間帯に
- Where(どこで):リビングのソファにて
- Who(だれが):A様が
- What(何を):お茶を飲む際にむせ込みが見られた
- Why(なぜ):一気に飲み込もうとされたためか
- How(どのように):背中をさすり、落ち着かれるまで見守りを行った。その後は異常なし。
主観的な形容詞を避ける
「元気に過ごされた」「不穏だった」といった主観的な表現は、読み手によって解釈が分かれるため、具体的な行動に置き換えます。「笑顔で他利用者と会話されていた」「声を荒らげ、立ち上がる動作が5回見られた」と事実を記すことで、推敲する時間を短縮でき、情報の正確性も向上します。
記録が溜まるのを防ぐ「隙間時間」の活用術
すべての業務が終わってからまとめて書こうとすると、記憶を思い出す作業に余計な時間がかかります。記憶が鮮明なうちに「小分けに書く」のが、残業を減らす鉄則です。
直後メモの習慣化
ケアの合間の1〜2分を活用し、ポケットに入れたメモ帳や付箋にキーワードだけを書き留めます。「10時、B様、転倒、右膝擦過傷」といった断片的な情報があるだけで、後で正式な記録に書き起こす際のスピードが格段に変わります。
優先順位に基づいた随時入力
一日の終わりではなく、大きなイベント(入浴、受診、事故など)が終わった直後にその項目だけを入力してしまう「随時入力」を推奨します。定型的なレクリエーションの様子などは後回しにし、個別性の高い事案から片付けていくことで、精神的なプレッシャーも軽減されます。
職場全体で取り組みたい、介護ソフトやデジタルツールの導入メリット
個人の努力には限界があります。もし職場全体で記録業務が負担になっているのであれば、ICT(情報通信技術)の活用を検討する段階かもしれません。最近の介護ソフトやデジタルツールは、現場の声を反映した使いやすいものが増えています。
二重・三重の転記作業をなくす
手書きの連絡帳、バイタルチェック表、経過記録など、同じ内容を何度も書き写す「転記」は非常に非効率です。タブレット端末を用いた介護ソフトを導入すれば、一度の入力で関係書類すべてにデータが反映されるため、事務作業時間を大幅に削減できます。
音声入力や選択式項目の活用
スマートフォンの音声入力機能を活用すれば、歩きながらや片付けをしながらでも記録の骨子を作成できます。また、「食事を全量摂取した」「排泄があった」といった定型的な報告を選択式(チェックボックス)にするだけで、キーボード入力の手間を省き、誤字脱字の防止にもつながります。
まとめ
介護記録の効率化は、あなた自身の生活を守るだけでなく、利用者さまへのケアの質を高めることにも直結します。
「記録のために残るのが当たり前」という文化を少しずつ変えていくためには、まず個人の書き方を見直し、次に職場全体での仕組みづくりへと目を向けることが大切です。簡潔で分かりやすい記録は、チーム内での情報共有を円滑にし、結果として利用者さまの安心・安全を支える土台となります。
日々の業務のなかで、まずは「5W1H」を意識した一文から始めてみませんか。小さな工夫の積み重ねが、定時で晴れやかに帰宅できる毎日へとつながっていくはずです。

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